開業までの経営学

歯科医院経営者としての勉強法

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はじめに

歯科技術の勉強は学生時代の延長で学べますが、「『経営』ってどうやって学べばいいのですか?」という質問を受けることがあります。
経営者として30年近い経験をお話しさせていただきます。

1、自分のものになる過程

知識を自分の知恵にするには?

本を読んだり、セミナーに出ても、自分のものになっていないことを実感する場合が多いのではないでしょうか?
それはまだ知識の段階でストップしていて、自分の知恵になっていない状態なのです。
俗に言う「腑に落ちない」という言葉がありますが、まだ完全に腑に落ちていないのです。

自由自在に使いきれる知恵にする為には、とにかく実践してみなくてはいけません。
しかしながら、実践しても大抵は失敗します。
そしてまた、本を読み返したり、考えて再度実践します。
そうやって試行錯誤しているうちに、いつの間にか「腑に落ちて」自分の知恵に化学変化しているのです。

自分の知恵にするためには outputが必要

大切なのは、とにかく「実践して考える」ことを繰り返すのです。
そして知識を知恵と勘違いしないで、1日でも早く知恵になる為に努力することです。
そのためには、例えば、本を読んで自分の知恵にしたければ、感想を書くなり、自分でまとめるなり、何らかの output をすることです。
そしてひっかかる点は、何度も読み返し、また実践するのです。

Input は簡単ですが、output は疲れるのです。
しかし疲れるからこそ自分の中に染み込んでくるのです。
せっかく input したものは、勿体ないですから、1つでも確実に自分のものにする為にoutput する習慣を身につけてください

歯科医院経営者としての勉強法

2、ノウハウよりも大切な本質

マニュアルにできることには限界がある

私が経営の本を書いている時に、出版者の人は、とにかくノウハウを出すことを、私に求められます。
私もできるだけ、わかりやすくノウハウを書いているつもりなのですが、全てのことを、ノウハウ的な書き方をすることは不可能なのです。

スタッフ教育において、マニュアルにできることと、自分で考えて判断してもらうしか説明のしようのないことがあるのと似ています。
スタッフが患者さんのことを考えていれば、自然に対応できることを、1から10までマニュアルにするわけにはいかないのです。

経営のセンスは、自分の頭で考えることによって身に付く

経営においても、ノウハウ的なことと、今まで生きてきた上での人との対応、話し方など、一言で言えば経営のセンスのようなものは、口で伝えることはできない部分はあるのです。
私自身にしても、初めから、今の知識があったわけではなくて、多くの失敗の上で、そういうセンスが、少しずつ身に付いてきたのです。

経営のセンスというものは、ノウハウ的なものを追い求めるのではなく、今回は何故成功したのか、あるいは何故失敗したのかという本質を、1つ1つ自分の頭で考えることによって、身に付いてくるのです。
「これをやればうまくいきますよ!」と勧められて、それをやって、うまくいっても、それは単なるボーナス的なお金であって、それが将来、2倍、3倍に増える知恵とはならないのです。

成功にも、偶然得られた成功と、将来何倍にも膨れ上がる成功とがあるのです。
目先の売上げに捕われることなく、1つ1つの本質を理解していくことによって、将来的に大きく飛躍することもできるのです。

マニュアル人間

3、1症例目に手をつける勇気が人生を変える

新しいことを勉強しても、いざ治療するとなると躊躇してしまう

一般 GP が、インプラント、矯正治療といった、大掛かりな自費治療の導入に二の足を踏むのは、治療結果が思うようにいかなくて、何かトラブルになるのが怖いという気持ちが強いからでしょう。

大学とかに残って、そういう治療をする場合には、先輩の医局員がフォローをしてくれたり、大学というバックグラウンドがあるので、トラブルになってもどうにかなるという心の支えがあるから、治療をしていくことに抵抗がなくなってくるのでしょう。

一方 GP の場合には、自分で開業して、少しずつ信用を築いてきて、もう少し飛躍したいと考えて、矯正やインプラントなどの新しいことを勉強しても、実際に患者さんに、いざ治療するとなると、どうしても躊躇してしまうのです。

特に地元密着型での診療形態を作られている GP の先生方にとっては、1人の患者さんの信用を失うということは、その後も多くの患者さんを失うことを意味しますので、どうしても未知の治療の導入に慎重になってしまうものなのです。

とにかく早くスタートすることが大事

矯正もインプラント治療も、将来的に導入しなくても経営的にやっていけると考えられている先生なら、無理に危険を冒して導入しなくてもいいと思うのですが、いつかは矯正なりインプラントなりを、診療に導入しなくてはやっていけないと考えられているのであれば、1日でも早く導入する方が得策だと思います。

人間は、若ければ若い程、勉強意欲もありますし、あるレベルに達するまでには、ある程度の症例数をこなすことと、ある程度の時間が必要になるのですから、とにかく早くスタートすることが大事なのです

もちろん初めの症例として、治療例や患者さんを選ぶことは大切ですが、一歩踏み出せなければ、何も始まらないのは、好きな人がいても、告白できなければ何も始まらないのと同じです。(笑)

勇気

4、完璧な準備をすることよりもスタートを切る勇気を持つ

非の打ち所がない、というアイデアはない

院長なら誰しも、クリニックの繁栄について考えていることでしょう。
そうして、いろんなアイデアが浮かんでくることと思います。
自分の中では「これは!!」と思うことを実行しても、多くの場合には思った程の効果はないものなのです。

アイデアを実行する時、十分に考えて、どこからも非の打ち所がない状態で実行することよりも、多少不十分なことが分かっていても、1日も早く行動に移すことの方が大切なのです

非の打ち所がないと思えたアイデアでも、実際に行動に移せば、必ず不十分な点は見えてくるものなのです。
それならば、とにかくスタートして、不十分と分かったことを、1日も早く補っていく方が、時間的なロスがないのです。

とにかく一歩を踏み出す勇気が大切

殆どの人は、不十分な準備でスタートして、にっちもさっちもいかなくなったらどうしようと考えるので、なかなかスタートが切れないのです。
準備というのは、すればする程、穴も見えてきて、恐怖心も強くなってしまうのです。
ですから、頭はいいけど勇気のない人は、周りから見るとすでに十分な準備をしているように見えても、結局スタートを切れないのです。

女の子に声をかけたり、告白する時も、シミュレーションして準備をすればする程、怖くなってきて、結局告白できないのと同じです。(笑)
スタートすると決めたら、ある時期は思考をストップして、とにかく一歩を踏み出す勇気が大切になってくるのです。

5、成功する為には人と違うことをすること

他人の意見や世論に流されるタイプの人間では、成功しづらい

野茂、イチロー、野村克也、白鵬など、成功している人間には頑固者が多いです。
それは逆に言うと、他人の意見や世論に流されるタイプの人間では、成功しづらいということも言えます。

そもそも仕事における成功者というのは、何を意味するのでしょうか。
周りとは違ったことをして評価される、その世界での数%の人のことを、周りは成功者と見なすのです

「あの人は成功しているな!」と感じる人とは?

医療人としては、他人ができない難しい治療をこなせる人、医学の発展の為に貴重な研究を発表して認められた人、経営的に周りが羨むような成果を上げているクリニック、etc.…………。
勿論、同業者からは、特別に成功していると評価されていなくても、多くの患者さんから評価され、主観的に、いい歯科医人生を送れたと満足することは、それはそれで1つの成功の形だと思います。

ここでは、周りの多くの人が、「あの人は成功しているな!」と感じる、同業者の中でも希なことをしている人のことについてお話しましょう。
もし歯医者なのに、常に TV でコメンテーターとして話をしていれば、視聴者はその人を成功者として見なすでしょうし、歯科医に対してセミナーを開講していれば、同業者は、その先生のことを成功者と見なすでしょう。

リスクを覚悟して挑戦するから成功者になれる

いずれにしても、周りの同業者の中で、それをやっている人が少ないことをやっていれば、人はその人のことを特別と見なすのです。
野球の選手で、多くの人が大リーグに行き始めたら、大リーグに行っただけでは成功者と見なされませんが、まだ大リーグに挑戦する人が少ない場合には、大リーグに入団するだけで、成功者と見なされるのです。

すなわち、周りの人が評価していない時点で、リスクを覚悟して挑戦するから、成功者になれるのです
その為には、周りの意見に流されない、自分を持っていなければなりません。
それは普通の人から見ると、頑固者と見なされます。

自分の考え方が、周りと違っていても、それをやり遂げられる強い意志がなければ、成功することは難しいのです

成功者

6、1日の中に診療時間以外に情報収集の時間が必要

夢のような労働体系の秘密とは?

私の師匠と仰ぐ先生は、診療時間は午前9時から午後5時までと、歯医者にとっても、スタッフにとっても、夢のような労働体系なのです。
しかし、その先生方は診療後にも勉強されているので、決して遊んでいるわけではないのです。(笑)

診療でクタクタになったのでは、勉強して新しい情報を仕入れる気力と体力が維持できない為に、そういう体制にしているということを聞いたことがあります。
それを聞いた当時は30歳前後だったので、あまりピンと来ませんでしたが、50歳を過ぎた今では、この先生のおっしゃられた深い意味が分かってくるようになってきました。

今の私には代診もいて、私が担当するのはほぼ自費治療のみなので、時間的にはかなりの余裕がありますが、多くの情報を得ようと勉強したり、それを使っていろいろとアウトプットしていますと、とにかく時間が足りないのです。
自分にとって診療しかしない毎日ですと、将来的に衰退していくみたいで、不安に襲われてしまうのです。(笑)

診療だけの毎日で「将来は大丈夫?」

診療だけの毎日は、肉体労働者と同じで、そこに進歩や向上ということがなければ、必ず誰かにドンドン追い抜かれていってしまうのです
年齢を経る毎に、経験と知恵が伴わなければ、体力と気力のある若い人間に負けてしまうのです。

今の私には、ただ診療に追われて1日を過ごすという生活は考えられません。
忙しい、忙しいと言って、診療だけに追われている先生を見ると、「将来は大丈夫?」と心配してあげたくなってしまいます。

もしかしたら、休みの日にまとめて勉強されているのかもしれませんが、長い間の成功を望むのであれば、体を使った仕事だけでなく、将来に向けた情報収集という先行投資をすることは、必要不可欠なのです。
勿論、勉強する情報の内容いかんで、将来は明るくも暗くもなりますが……

先行投資

7、自分に先行投資できる人は経営的に好循環させることができる

知識や情報は、人より先んじてこそ効果を発揮

世の中には好循環と悪循環という流れがあります。
何をやってもうまくいかない時期と、することなす事がピタッピタッと当たる時期もあります。
これは理屈で説明できないところも多いですが、売上げを上げたり、仕事を上昇させることに関しては、ある程度自分の力でコントロールできる部分もあります。

と言いますのも、経営的にうまくいきますと、自分へ投資するお金に余裕が出てきますので、失敗を恐れずにドンドン投資して、知識を増やしていくことができるのです。
知識や情報は、人より先んじてこそ効果を発揮することが多く、人より先んじるためには失敗するかもしれないリスクを背負える人だけが、成功するチャンスも手に入れられるのです。

1日も早く自分に先行投資していける態勢を

そうやって失敗したりしながら、本物の情報を見抜ける力も身に付いてきます。
経営に関しては、自分に投資できる余裕のある人程、どんどん伸びていき、好循環で売上げも上がっていくのです。

逆に自分に投資する余裕のないギリギリの状態の人は、何かいい話はないかとか、限られた情報や常識の枠の中で考えていくしかないので、周りから抜き出た存在になることは少ないのです。
好循環にするためには、1日も早く経営的に自分に先行投資していける態勢を作る努力をしていくべきです。

8、歯医者にとって一番の財産

「頭の中の知識は盗むことが出来ない」

私は恩師の先生から、いつも「お金は盗まれたり、騙されたりして失うことはあっても、頭の中の知識は盗むことが出来ないのだから、売上げの一部は自分への投資として勉強に使いなさい」と教えられました。

そして「患者さんさえ自分についてきてくれれば、お金はいつでも稼ぐことはできるのだから、患者さんを大切にしておくこと」を何度も諭されました。
歯医者にとっての財産は、「知識と患者さん」だということを、経験豊富な先生から教えられ、いつも頭の中には留意しておくようにしていました。

「知識と患者さん」プラス「社員」

今の時代は、日本の借金が返済できなくなり、円が紙屑のようになってしまう可能性すらある時代であると脅かされますと、この先生の教えに従って「知識と患者さん」を大切にしていかないといけないと心しています。

そして今では「知識と患者さん」プラス「社員」を大切にしなければ成功できない時代になっています。
お金というものが、実体のない不確かなものであるのと対称に、頭の中の知識や仲間は、日本がどんな状況になったりしても、自分を助け、道を切り開いて前進させてくれるのです。

人間に歯がある限り、患者さんと社員に支持され、他の歯医者との違いをアピールできるトップ 10%に入っていれば、どんな時代がやってきても怖くはないのです。
その為には、歯科技術の勉強と共に、患者さんを集めるマーケティングの技術も身につけておくことが大切だと思います。

☆まとめ

いかがでしたでしょうか?
学校の勉強は「知識」の詰込みだったと思いますが、経営の勉強とは「経験」の積み重ねだとも言えますね。

「頭がいいだけでは成功できない」と言われますが、頭のいい人ほど「できない理由」を並べ立てて行動しないことを正当化しようとしがちです。
是非、行動を積み重ねて結果にコミットしていってください!!

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