はじめに
「経営者は孤独」と言われます。
立場が違えば、どちらがいいとか正しいとかいうことではなく、物の見え方が変わってきます。
選手と監督とでは、立場も責任も違うために、お互いの考え方を理解できなくなる場合も少なくないでしょう。
リーダーとは、周りから批判されたり反対されても、将来的には組織がいい方向に向かっていくと信じれるなら、前に進む決断をしなければいけない時もあります。
経営するとは、孤独と信念とがいつも試されている立場ではないかと思います。
今回は経営者の心構えのようなことをお話ししていきますね。
1、斬新なアイデアが消えていく理由
周りの意見をいろいろと聞くデメリット
世の中には常識という枠に捕われていて、改善できる余地があるのに、そのままでいることが結構あるものです。
そういったことを少しずつ疑問に感じ、アイデアを出して、新しい試みとして行動に移そうと考える人はたくさんいるものです。
しかし、周りがやっていないということは、自分の考えの中に、何か見落としている重大な問題があるのではないかと不安になって、周りの意見をいろいろと聞こうとするのです。
これがくせ者であって、周りの人の意見を聞いたが為に、多くの人は実際に行動に移せなくなるものなのです。
自分を信じてすぐに行動に移せるか?
特に相談する相手が身内であったり、女性などは、基本的に保守的な考え方をして、大きく成功することよりも、より失敗しないことを大事に考えますから、斬新なアイデアは怖くて賛成できないものなのです。
従って、身内などに相談して賛成してもらうことによって、さらに背中を一押ししてもらおうと考えていたら、逆に引き戻されることになってしまうのです。(笑)
そうしていいアイデアの多くは、周りに相談したが為に消えていく運命にあるのです。
結局、斬新なアイデアを行動に移せるタイプの人は、自分の考えを周りの人に話して、賛成してもらってから行動しようと考えるのではなく、自分を信じて、すぐに行動に移せるタイプの人間なのです。
その為には、自分の考えに対する自信と、数々の不安に打ち勝って前進できる精神的強さが必要になってくるのです。
2、配偶者に相談してもなかなか賛成してもらえないと思え
「そんなことは歯医者らしくないんじゃないの!」
私は結婚が遅かったのですが、仕事に関してはこれがとてもよかったのです。
配偶者というのは(主に奥さん)、どうしても家庭の安定を第一に考えるもので、何か新しいことをしようとすると、必ず否定的な意見を言って反対するもので、反対されると、どうしても気持ちが萎えてしまいます。
例えば、何か広告を出そうとしたら「そんな広告で患者さんが来るの?」1人スタッフを入れようとしたら「スタッフ1人増やして、それだけの売上が増えるの?」新しいことをやろうとすれば「そんなことは歯医者らしくないんじゃないの!」等々、特に女性は子供の頃から、大事に大事に育てられ、個性的であることよりも、調和を大切に協調性のあることを優先するように育っている場合が多いのですから、前例がないようなことや、周りと違ったことをすることには、なかなか賛成してくれないものなのです。
反対されても、信念をもって実行に移せるように
起業しようとする男の夢を積極的に応援してくれるような奥さんは、1 割もいないのではないでしょうか!?
何か新しいことをしようとする際に、奥さんに相談する時は、反対されるものと思って相談すれば腹も立たないかもしれません。(笑)
そして、反対されても自分の考えが揺らぐことなく、信念をもって実行に移せるようになれば、立派な経営者に一歩近づいたのではないでしょうか。
反対されて実行すればけんかにもなりかねませんので、「反対されるかも……!?」と思うのであれば、自分の判断を信じて、自己責任でまずは行動する方が得策かもしれません。
3、少数意見の中に真実がある
ペーパードライバーがタクシーの運転手にアドバイス!?
世の中には、ペーパードライバーがタクシーの運転手や、F1 ドライバーにアドバイスしているようなことが、平気で起きています。
そんなバカなと思われますが、世の中の常識というのは、実体験を得て行動している人を、平気で否定したりするのです。
ペーパードライバー数人の中に、タクシーの運転手が1人はいって会話をすれば、ペーパードライバーの意見が正しくなってくるのです。
世間では、常識を疑いもせずに、鵜呑みにして生きている人の方が多いのです。
特に、頭のいい人ほどそういう傾向が強いように思います。
一般的にも常識を疑って、自分で体験してから考える人よりも、何の疑いもなく、常識を信じる人の方が多いのです。
そうすると、そこで何かを掴んだ人の意見は、間違いにされてしまうのです。
もっともらしい意見に左右されるな!
経営的にも、いいアイデアを実際に行動に移せる人は少数派ですし、その中でも成功できた人は、もっと少数派なので、世間一般で正しいとされるのは、いいアイデアを頭で考えるだけで実行したことのない人の、もっともらしい意見なのです。
それを押しの強い人が主張し、人に強く意見しない成功者が黙って聞いていれば、上記のペーパードライバーが F1 ドライバーに運転をアドバイスするという、滑稽なことが生じるのです。
私は、殆どの真実は、少数意見の中にあると考えていますので、多くの人が賛成すればする程、その意見は本当に正しいのか疑ってしまいます。
人生全般については断言できませんが、少なくとも経営に関しては、これは正しいと思います。
経営における真実はほとんどの場合、少数意見の中にあると思ってもいいのではないでしょうか?
4、仕事の悩みはクリニックのレベルで違ってくる
今までに経験したことのない新しい問題が・・・
貴方が勤務医の場合には、勤める年数が増えたからといって、新しく悩むことが、年々発生するということは実感しにくいでしょう。
しかし、貴方が開業医ならば、クリニックの発展とともに、今までに経験したことのない、新しい問題が必ず発生してくるものなのです。
人は誰でも、悩んだり、嫌な思いはしたくないものです。
今悩んでいることを、1つ1つ解決しようとして、知恵を絞り努力します。
そうやって頑張っているうちに、いつの間にかその悩みも解決し、クリニックも一歩一歩前進していくことにより、「めでたし、めでたし!」とはいかないのです。
経営においては、何も悩まないですむということはない
クリニックが成長していけば、それに伴って、今まで考えもしなかった新しい問題が発生してくるのです。
経営というのは、その繰り返しで、どのレベルに上がったとしても、何も悩まないですむということはなくて、悩みの種類が違ってくるだけなのです。
例えば、開業当初は、お金がない、人がすぐ辞める、患者さんが少ない、患者の質が低いといった悩みなのが、開業後10年もして、ある程度軌道に乗ってくれば、スタッフをまとめる人間が欲しい、全ての患者さんに目が行き届かないので苦情が出る、売上げも多いが、1ヶ月の経費も膨大なために、売り上げが少し傾いても月々のプレッシャーが強い、テナントが小さくて移転しようかと考えているなど、同じ歯医者なのに、仕事の悩みが全然違ってくるのです。
クリニックのレベルが上がってくると・・・
そして、クリニックのレベルが上がってくると、その悩みを相談できる人が、どんどん減ってくるのです。
と言いますのも、相談する人のレベルにまで、相手方が到達していなければ、相談される人も、経験していないことは、想像で答えるしかないのです。
ユニクロの社長が、1件しかお店を持っていない店主や、2~3件ぐらいのチェーン店の社長に相談しても、解決できる内容は限られてしまうのです。
逆に、そういった店主が、ユニクロの社長に相談しても、ユニクロの社長の方は、自分が経験してきたことなので、答えを即答できるものなのです。
そうやって、クリニックがどんどん成長していくと、相談できる人がどんどん減ってきますので、自分で考えて、1つ1つ解決していくしかなくなり、孤独感が強くなってくるのです。
5、内気で思慮深い人間が反撃する時代
成功する人のタイプが変わってきた
最近、他業種においても、成功している人を見ると、一昔前の体育会系のリーダータイプの人ではなく、どこにでもいる普通のオジさん、オバさんといった人が多くなってきていることに気付きます。
どちらかというと読書が好きで、自分で知識を増やすことは好きだが、一見行動的ではないタイプの真面目な人が、ビックリするような結果を出しているのです。
これらはインターネットの普及によって、勉強しようと思えばいくらでも情報を得ることができることと、人前に出て何か恥ずかしい思いをしなくても、簡単に自分の情報を発信できるという2点から、今までの成功者のイメージが大きく変わってきているのを感じないわけにはいきません。
何かの営業をする際にも、強引な電話での勧誘や、しつこい郵便物の DM では思うような反応が得られず、今ではお客さんの方が自分で情報を集め、十分に納得した上で魅力的なオファーを出してくれるお店を選んで、自分の意志で行動に移しているということが顕著に表れています。
そうやって選ばれるお店は、多くの支持者を持ち、一人勝ちしているのです。
思慮深い、慎重な人ほど成功できる時代
大切なのは、お客さんに十分な情報を与え、お客さんの意志で、そのお店を選びたくなる何かを提供しているということです。
以前は、よく考えるぐらいなら、考えるより行動するタイプの人間の方が、成功していましたが、今では十分考え、相手の心理面も考慮して、相手の立場になって考えられる人間が、大きな結果を出せる時代なのです。
いろんな事件も多く、即決してだまされたりいやな思いをするぐらいなら、ゆっくり考えてから行動しようとする人が増えてきているのでしょう。
そういう時代ですから、たとえ度胸や行動力のない、内気で真面目な人間でも、それを活かしてお客様の心を掴む能力があれば、成功できる時代になってきているのです。
お客様が十分考えて選ぶ時代なので、思慮深い、慎重な人ほど成功できるのです。
6、新しいことをしようとすると周りは一斉に反対する
自分を信じられる人間だけが、前に進める
経営とは、日々決断しながら進んでいくことです。
小さな決断から大きな決断まで、1つ1つ決定しなければ前進しないのです。
往々にして周りの人間は変化を嫌います。
今までと違うことをしようとすると、必ずそれを止めさせようとする作用が働きます。
それは身内からであったり、長く勤めている人からであったりする場合が多いです。
院長には院長なりの、展望や未来図があります。
しかし、院長の未来図は身内にも、全てのスタッフにも理解してもらうことは難しいのです。
なぜなら、人は基本的には変わりたくないものだし、それに新しい試みが、必ず成功するという保証はないからなのです。
院長は成功すると思うからこそ、思いきって新しい事をやろうとするのです。
一方、身内やスタッフは、「失敗したらどうするの!?」という、後ろ向きの考えが強いから、新しい事に反対するのです。
院長は四面楚歌で、「自分しか賛成する人がいない!」という場合が殆どなのです。
ここで自分を信じられる人間だけが、前に進めるのです。
「お前ら見たか!!」と、心の中で叫んでやればいい
この試みが、失敗しようものなら、「それ見たことか!!」と集中砲火を浴びる覚悟がいるのです。
たとえ成功しても、成功した時に、周りの人間は、自分が反対したことなどは、とうの昔に忘れて、何も感じてくれないのです。
そういう成功を継続的に続けていたら周りは「ほんの少し」だけ評価してくれるのです。
院長なんて(経営者なんて)、失敗した時は集中砲火で、成功しても何の評価もない、割のあわない仕事なのです。(笑)
それでも、成功した時には、自分1人でガッツポーズをとって、周りの人間に「お前ら見たか!!」と、心の中で叫んでやればいいのです。
誰も評価してくれなくても、毎日毎日、決断していくのが院長の最大の仕事なのです。
7、たくさん試みた者が勝つ
開業して数年がたちますと、振り返れば多くの try & error を繰り返して、少しずつ上昇していっていることに気付きます。
すごく当ったということの方が少ないですが、外れたと思ったことも、後で振り返ってみれば、大きな財産になっていることもたくさんあります。
費用対効果が明らかにプラスでないものでも、幾つか組み合わせたり、再利用することによって、プラスに変身することもあります。
やっている時には、イマイチだとか、失敗だと思えることが、後にそれを少し改善すると成功したり、時間が経って振り返ってみると、成功だったと感じることもあるのです。
何でもかんでも思いついたことをやったり、せっかくやったことを反省したり分析しないのは、勿体ない話ですが、あまりに慎重になり過ぎて、明らかに成功と思えることだけ試みようとしていたのでは、行動することが怖くなってきますので、気持ちの中では、失敗も幾つか集まると成功に変身すると、考えて行動する勇気も大切です。
☆まとめ
いかがでしたでしょうか?
野球やサッカーの監督をイメージしてもらえばわかりやすいですが、いい時はホイホイされますが、結果が伴わなくなってくるとすべての責任はトップが背負うことになるのです。
リーダーという立場は決して簡単な立場ではないですが、自分で決めて自分で責任をとっていくやりがいのある立場なのです。
やりがいと大変さは比例します。
失敗した経験を重ねながら立派なリーダーを目指してください。